専攻の沿革

東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻は、1996年に国際関係論専攻と相関社会科学専攻とが改組拡充されて設立された専攻である。

国際社会科学専攻の前身となった二専攻のうち、国際関係論専攻は、1953年に当時の大学院社会科学研究科(1963年に社会学研究科へと改組)に設立され、その後、1983 年に総合文化研究科に移管された。成立以来、半世紀以上になるが、この間、日本の国際関係論の研究と教育の中心的拠点としての役割を果してきた。一方、相関社会科学という新しい社会科学の試みが制度として発足したのは、東京大学教養学部の後期課程である教養学科(現在は改組・改称されている)に、相関社会科学分科が発足した1978年のことである。それから5年後の1983年に、総合文化研究科のなかに相関社会科学専攻が設置され、相関社会科学という新たな学問を日本に定着させ、発展させることに力を注いできた。

 

 

専攻の目的と特色

国際社会科学専攻は、新しい時代にふさわしい専門的な研究者の育成を主眼におき、学術的な成果を社会へ還元することを目的としている。大学、研究所の研究者・教育者のみならず、国際機関や官庁、NGO、民間シンクタンクなど幅広い分野で活躍する専門的知識を身につけた国際的な人材を生み出すことを目指している。

国際社会科学専攻は、このような目的に沿って、以下のような特色を備えた研究・教育活動を展開している。

  • 実績のある国際関係論、相関社会科学の教育・研究内容をさらに豊富にし、21世紀における日本および国際社会の葛藤と協調の具体的様相を、多様な社会科学の方法を駆使して明らかにする。
  • 経済発展、環境、人権などをテーマに、グローバルな視点から公共政策・国際協力論の各分野について集中的な研究・教育を行う。
  • 新卒者、他大学出身者に加えて、社会人、外国人を積極的に受け入れ、大学と社会のダイナミックな協力関係を創り出す。

 

専攻の講座構成

国際社会科学専攻は、以下の4大講座から構成されている。

  1. 国際協力論大講座:グローバルあるいは地域的な摩擦・紛争の解決のために必要な相互的かつ多元的な協力関係構築の理論と方法を検討する。モノやカネをめぐる国際経済摩擦、安全保障、環境保護、国境を越えたヒトの移動、情報の伝播と文化保全の問題をグローバル・コミュニティの出現を視野に入れて研究し、教育する。
  2. 国際関係論大講座:世界全体を覆っている国際社会の誕生・拡大・発展・変容・飽和のダイナミズムならびに、今日と将来の国際社会の本質、その中での主体的行動の意味を解明する。また、国際社会の成り立ち、国家をはじめとする国際的行為主体の対外行動、主体間の相互作用など、国際社会の基礎となる対象を総合的に分析する方法論を確立し、教育する。
  3. 公共政策論大講座:国家と地域社会、法と経済、市場と組織、あるいは家族と個人など、変容しつつある現代社会の諸関係の構造の特質を公共的・国際的視野に立って明らかにする。問題解決をめざす多様な運動のダイナミズム、制度化や政策形成の過程を具体的に分析しつつ、新しい時代の公共性のあり方を研究し、教育する。
  4. 相関社会科学大講座:技術、資源、生態環境、人口など複合的な環境制約下における国家の役割の変容、民族と文化をめぐる葛藤、あらたな市民意識の模索、個人の自由・アイデンティティの再定義など、転換期にある人類社会の諸問題を、学際的な方法を駆使して、同時代的、歴史的、問題解決的な観点から分析し、教育する。