
今回は、2025年10月に国際社会科学専攻に着任した鈴木悠准教授にインタビューしました。経歴や研究の内容、なぜその専門分野を選んだのかを語ってくれました。
――これまでのご経歴を教えてください。
私は、子供の頃に海外にいた時期があり、中高は日本で過ごしましたが、大学で再び海外に出て、カナダのカルガリー大学に進学しました。そこでBA(国際関係学)とMA(歴史学)を取得しました。その後、イギリスのロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で国際関係史のPhDを取得しました。いくつかのポスドクを経て、2017年4月から2年間、サントリー文化財団の鳥井フェローというポストに就きながら、東京大学先端科学技術研究センターに協力研究員として籍を置き、2020年からは京都大学で2年間日本学術振興会特別研究員PDのポストに就いていました。2022年4月からは東海大学政治経済学部政治学科で勤めた後、今年の10月から現職に就いています。
――研究者を志した理由を教えてください。
学部時代、入学した時は全く研究者になる気はありませんでした。ただ、その時にお会いした国際関係学や歴史の先生方がすごく良くしてくださり、授業が面白かったのがきっかけで、国際関係史の道を追究することになり、今に至ります。もともと明治期の日本の歴史、特に日英関係史に関心があったということもあり、気がついたらここまで来ていました。
――研究について教えてください。
国際社会科学専攻の授業で担当するのは国際政治の歴史、特にヨーロッパの国際政治の歴史で、分科の方ではイギリスの歴史になりますが、私の専門の専門は、19世紀末の日本とイギリスの関係(日英関係史)です。歴史にも色々なアプローチがありますが、私は資料を見ながら、一つの問題に対して様々な意見や事実を並べてみて、そこから組み立てていくという、理論よりも実証的なアプローチをとっています。最近公表した論文として、「日本の台湾出兵に対するイギリス政府の反応 」『東アジア近代史』第29号、52-66頁(2025年6月)や「世論が政治外交を動かす過程を考える-19世紀イギリス政治外交史の事例を中心に」『ヒューマンセキュリティ』第15号(2025年3月)などがあります。
――なぜ日英関係史をご専門に選んだのですか?
なぜ日英関係史なのかというと、気がついたらという感じではありますが、英語も日本語もわかるという状況で19世紀をやりたいと思った時に、アメリカよりイギリスの方が面白いものが見つかるかなと考えたからです。
PhDのときの指導教官のアントニー・ベスト先生がまさしく日英関係史の専門家で、その時に資料に基づいた実証研究というスタイルを教えていただきました。
――アメリカよりイギリスの方が面白い、とはどういうことでしょうか?
当時(19世紀末)、世界大国として(今や冷戦期のアメリカのような)立場にあったのがイギリスでした。私は日本の歴史そのものというよりは、日本の国際関係を見ることに興味があったので、そういった意味で、欧米の国の中で日本に一番深く関わってくるイギリスが良いかなと考えました。
――専門分野の魅力はどのような点ですか?
19世紀をやりたい理由は、そこに「帝国」があるからです。人類の歴史の中で、それが良かったかどうかは別として(評価は色々ありますが)、普遍的に存在した「帝国」というものを考える上で、近代の帝国主義に関してイギリスは様々な問いを投げかけてくれます。それがイギリス史を研究する面白さの一つです。
私たちは今、「帝国があってはいけない」という規範の中で生活しています。指導教官のベスト先生もおっしゃっていましたが、国際関係を考える上で、冷戦はもちろん大事ですが、実は「脱植民地化」はもっと重要なテーマかもしれません。普遍的にあった帝国が明確に「あってはいけない」ものになったことは非常に重要です。そして、その規範が変わった後も、帝国的なものはなくなったのか、という問いもあります。「帝国」というものを考えることは、国際関係史や国際関係学において非常に重要であり、そこが面白いところだと感じています。
――学生の方々におすすめの本はありますか?
少し抽象的な言い方になりますが、学生の皆さんには、まずは関心のあるテーマについて、自分が本当に楽しいと思う好きなものを読むべきだと思います。ただ、ある程度知識が蓄積してきたら、どこかのタイミングで「古典」は読んだ方が良いかと思います。そのジャンルがどのような歴史を経て積み重ねられてきたのか、ということを意識してみると面白いでしょう。
――学生のみなさんにメッセージをお願いします。
私の方が学生の皆さんから勉強させていただきたい、一緒に勉強することを非常に楽しみにしている、というのが正直なところです。学部生の授業でも、私の研究関心(例えば帝国史)について問いを投げかけると、皆さんがついてきてくれるので、そうした形で私自身も勉強させてもらえればと思っています。もし近代イギリス史や、近代の国際関係史(ヨーロッパ中心)に関心がある方がいたら、ぜひ授業を取ってみてください。大学院の授業もよろしくお願いします。