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日時:2019年6月1日(土)15:00〜19:00
場所:東京大学駒場キャンパス 18号館コラボレーションルーム2 ( https://www.u-tokyo.ac.jp/campusmap/cam02_01_17_j.html )
テーマ:森 悠一郞『関係の対等性と平等』(弘文堂) 書評会
報告者:
阿部崇史(東京大学大学院総合文化研究科博士課程)
石田柊(東京大学大学院総合⽂化研究科博士課程・日本学術振興会特別研究員)
宮本雅也(早稲田大学教育・総合科学学術院助手)
コメンテーター:森悠一郎(北海道大学法学研究科・法学部准教授・著者)
企画趣旨:
森悠一郎著『関係の対等性と平等』(2019・弘文堂)の書評会を行う。本書は、J. ロールズの『正義論』に端を発する平等主義的正義論の流れに依拠しつつ、関係的平等主義という観点から社会正義のオリジナルな構想を提示する好著である。本書が有する意義として、ここでは3つのものを挙げておく。
第1の意義は、ロールズ以降の平等主義的正議論が主に分配に焦点をあてていたのに対して、著者による平等主義の構想が、人々による相互行為の平等性にも焦点を当てて構築されていることにある。すなわち著者は、I. M. ヤングによる分配パラダイム批判を重要視して、分配の平等性と相互行為の平等性の両方に焦点を当てた、より包括的な平等主義の構想を提示しているのである。
第2の意義は、そのような相互行為の平等性に反する不正義の態様として、従属・排除・差別という3つの類型を区別し、それぞれに対する治癒策を規範的な視座から提示していることである。このような相互行為ないし社会関係における不正義は、著者が属する法学だけではなく、政治学や社会学といった、社会科学の幅広い研究にとって重要な論点になる。さらには、例えば雇用や高等教育における男女差別が頻繁に取り沙汰されるように、現実社会における重要な課題でもある。
第3の意義は、関係的平等主義の理論を洗練および精緻化させたことにある。E. アンダーソンに代表される関係的平等主義の立場は、多くの人を引きつける魅力的な立場ではあったが、同時に曖昧でつかみ所の無い立場でもあった。それに対して著者の議論は、前述した相互行為における不正義の態様を分節化するだけではなく、潜在能力アプローチと充分主義の組み合わせを関係的平等主義の立場から明確に正当化することに成功している。
本研究会では、以上のような大きな意義を有する著作に対して、3人の報告者が自らの観点から議論を提示する。そしてその上で、著者からの応答をいただき、フロアを交えて議論を行っていく。3人の報告者はそれぞれ、分配的正義論、関係論的平等主義、そして差別の哲学を、主な研究のテーマにしている。そのため、理論面と実践面の両方を視野に入れた内在的な議論が期待できる。
法哲学・政治哲学の専門家はもちろんのこと、社会的排除や差別などの現実的課題に関心を有する方も含め、幅広い方々のご参加を歓迎いたします。
研究会は公開ですので、専攻外の方、院生・学生の方でご関心のある方も、ぜひご来聴下さい。
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